オステオパシーとカイロプラクティックとの違い

オステオパシーとカイロプラクティックの違いについて質問を受ける事があるので、私の知る限りですがその違いを紹介したいと思います。

ここではスティル・アカデミィ・ジャパンで教育されている、フランスを中心とした筋骨格系・内臓系・頭蓋仙骨系を施術対象とするオステオパシーと、世界のカイロプラクティックの約9割以上が行う中心的なカイロプラクティックのディバーシ・ファイドを中心に比較してみます。

注意※あくまでもブログ作成者が知るなか、そして調べた範囲での見解です、国内の全てのオステオパシーとカイロプラクティックとの比較ではありません。範囲が膨大なので後日間違いが分かった場合、一部文章を訂正することもあり得ます。御了承下さい。

この内容やSAJに興味や入学を希望される方は、是非SAJの学校説明会や、日本オステオパシーメディスン協会の「オステオパシー入門」に参加ください。

オステオパシーとカイロプラクティックの誕生の比較

オステオパシー

オステオパシーは1874年に、カンザス州でアメリカ人医師あり、マグネティック・ヒーリングも行っていた、ATスティルが創造しました。

カイロプラクティック

カイロプラクティックは1895年に、アイオワ州ダベンポートの食品雑貨店を営みマグネティック・ヒーリングを行っていた、DDパーマーが旗揚げしました。

オステオパシーもカイロプラクティックもアメリカの中西部で、19世紀の中盤以降に誕生し、両者とも一時期マグネティック・ヒーリングを行っていました。
カイロプラクティックはオステオパシーの誕生の約20年後に、オステオパシーの最初の学校が作られたミズーリ州の隣のアイオワ州でカイロプラクティックが生まれました。

ATスティル

DDパーマー

オステオパシーやカイロプラクティックの機能障害の考えの違い

二つの手技療法の共通する所は、施術対象の身体の構造の機能障害の施術を行うことです。

この身体の構造の機能障害は、身体の構造に歪みや・緊張や・動きの制限などで確認され、この問題の背景に生理的な乱れがある機能障害の事で、各種症状の原因や要因に成り得ます。

オステオパシーやカイロプラクティックの対応するこの構造の機能障害は、オステオパシー機能障害や体性機能障害の事をいい、カイロプラクティックではサブラクセーションや脊椎関節機能障害または関節機能障害となります

詳しくは下記参照。

オステオパシーはオステオパシー機能障害

昔のオステオパシーはこの身体に生じた機能障害をリージョン(病変)と読んだり、オステオパシーリージョンと呼びました。

現在は全身の関節機能障害や筋・筋膜機能障害や、内臓系の内臓間膜の機能障害や、頭蓋仙骨系の硬膜の機能障害も、ほぼ全身の構造に確認可能な構造の機能障害をオステオパシー機能障害または体性機能障害として扱います。

言い換えるとオステオパシー機能障害は、オステオパスが扱う全ての身体構造の機能障害に対する広義の構造の機能障害と言えます、そのオステオパシー機能障害には色々な種類がある事になります。

オステオパシーが対応するオステオパシー機能障害

  • 筋骨格系の機能障害

(関節機能障害と筋・筋膜機能障害)

  • 内臓系の機能障害

(内臓提靭帯固着・内臓粘弾性低下・管腔臓器のスパズム・下垂など・・)

  • 頭蓋仙骨系の機能障害

   (縫合の制限・硬膜の制限・頭蓋骨の粘弾性の制限・脳脊髄液の排液の鬱滞)

カイロプラクティックはサブラクセーションまたは関節機能障害

誕生当初のカイロプラクティックは背骨だけで起こる機能障害だけに注目しました。オステオパシーも関節の機能障害にカイロプラクティックより前にサブラクセーションの言葉を用いましたが、あくまでもカイロプラクティックは脊椎の関節機能障害だけにこの言葉を用いました。

現在のカイロプラクティックはDDパーマーのカイロプラクティックとは異なり、オステオパシーの様に筋骨格系の全身の関節機能障害を扱う様になり、サブラクセーションの範囲が脊椎関節以外にも広がりました。

そのため現在のカイロプラクティックは筋骨格系の全ての関節機能障害がカイロプラクティックが扱う機能障害と言えます。

現在の主流のカイロプラクティックが対応する機能障害

  • 筋骨格系の全身の関節機能障害

オステオパシーは全ての構造と循環と神経

誕生当初オステオパシーが対応するオステオパシー機能障害は作用機序に血液やリンパ液や体液の循環の乱れと、神経の乱れが共に関わることに注目しました。

そして脊椎関節を含めた全身の関節や、膜(筋膜・胸膜・腹膜・内臓間膜)にオステオパシー機能障害が生じると考え、施術対象にしました。

 

カイロプラクティックは脊椎と神経を軸に全身の関節

誕生当初カイロプラクティックが対応する機能障害であるサブラクセーションは、神経の乱れを生じる事だけに注目しました。

カイロプラクティックは神経の働きを乱すポイントは、背骨の椎骨の歪みと考えたため背骨の脊椎以外を観察と施術のポイントとはしませんでした。

現在のカイロプラクティックは全身の関節機能障害も対応する様になりましたが、この考えの基本は変わりません。

この事はオステオパシーとカイロプラクティックの施術に様々な点で違いを生みます。

現在のオステオパシーとカイロプラクティックの施術範囲(部位)の違い

基本的にスティル・アカデミィ・ジャパンのオステオパシーと、カイロプラクティックの業界で最も教育の基準として普及しているディバーシ・ファイド・テクニックのカイロプラクティックと比較してみます。

※またその後に他のカイロプラクティックの事を少し書いてみます。

スティル・アカデミィ・ジャパン(SAJ)のオステオパシーの施術範囲

筋骨格系

SAJのオステオパシーは、全身の筋骨格系の関節・筋・筋膜を評価し施術します。

昔のカイロプラクティックは脊椎関節機能障害しか施術対象としませんでしたが、オステオパシーは誕生当初から全身の関節機能障害と筋・筋膜を施術対象としました。

内臓系

内臓同士や内臓と体幹も連結して繋がり神経や脈管を繋げることから、オステオパシーは内臓も施術範囲とします。
この内臓オステオパシーもSAJのオステオパシーです、また内臓に対するオステオパシー反射テクニックもあります。

この内臓を腹壁や胸壁などを介して物理的にアプローチする内臓オステオパシーの手技はカイロプラクティックには存在しません。一部にカイロプラクターは、体表の内蔵反射区を刺激して内臓機能の回復をはかる手技を用います。

頭蓋仙骨系

頭蓋も仙骨も筋骨格系なのに何故オステオパシーでは分けて表現するのかというと、誕生当初のオステオパシーは筋骨格系全体を手技の施術範囲としましたが、頭蓋や顔面の骨関節は施術範囲としませんでした。

頭蓋仙骨系のオステオパシーは従来の筋骨格系のオステオパシーが施術範囲としませんでした。
頭蓋や顔面も施術範囲とし、頭蓋と仙骨は一次呼吸メカニズムで同期した微細な呼吸運動をすると考え、従来のオステオパシーが筋骨格系で扱っていた、仙骨に対して頭蓋との連動した調和運動の回復を図るので、頭蓋仙骨系と言う言葉が出来ました。

 

 

 

 

カイロプラクティック・ミクスチャーとストレートの施術範囲

カイロプラクティックの業界は、旗揚げしたDDパルマーの様に脊椎の矯正のみを行ったが、DDパーマーの息子のBJパーマーは脊椎の中の問題の中心ポイントを上部頚椎のみに定め、この上部頚椎のみを矯正するホールインワンテクニックを、カイロプラクティックの本流と主張しストレートと言われる様になった。

DDパルマーが施術範囲としなかった四肢や肋骨の筋骨格系の全身の関節の施術や、筋・筋膜や頭蓋を施術範囲とするとミクスチャーも存在します。 

ミクスチャーでもオステオパシーの内臓系の内臓オステオパシーの様な物はありません。ただ内臓機能障害に対する反射テクニックは一部のミクスチャーが行なっている様です。

派閥とカイロプラクティックの主流

 

カイロプラクティックはある意味オステオパシーより、考えや理論が派閥により大きく異なる様に見えます。その為カイロプラクターがどの派閥のテクニックを学んだかで、受けるカイロプラクティックが異なります。

ミクスチャーは個人がミックスしている物で違いがあります。1993年のDチャップマン・スミスのアメリカのカイロプラクターの調査では、カイロプラクターの約9割はディバーシ・ファイを行なっているそうです。

カイロプラクターはディバーシ・ファイドを行いながら、個々で幾つかのカイロプラクティックをチョイスして行っている事に成ると思います。ブログが長文に成るのを避けるためディバーシ・ファイド以外の個々の手技の内容は省きますが、知りたい方は御自身で検索し調べてみて下さい。

ディバーシ・ファイド

カイロプラクティックを旗揚げしたDDパーマーのカイロプラクティックを、筋骨格系の脊椎関節のみを施術範囲とする行為として誕生させました。誕生当初は今では殆ど行われていないメリック・リコイルを行い後に、オステオパシーからヒントを得たと言われる「ディバーシ・ファイド」も用いたとされます。

DDパーマーいわく、「絶対にオステオパスのやる様に行ってはいけない」としていましたが、後のカイロプラクターは効果と応用性を広めるためかオステオパシーの様にディバーシ・ファイド・テクニックの施術範囲を、四肢や肋骨の関節機能障害も施術範囲に加えて行きました。

オステオパシーのディバーシに類似した関節矯正手技と違う所

このディバーシ・ファイド・テクニックはオステオパシーでは単純に、高速度低振幅法やスラストと言われる手法と類似した物です。

この手技はポキと言う関節音を伴う場合のある矯正法です。
※オステオパシーは基本的に高速低振幅を用いる場合は、優しく作用させ効果を持続させるために、TОGなどで周囲の組織を緩めてから行うのが一般的です。

オステオパシーにはこの他にも骨粗鬆症の方や、過敏な方にも安全にソフトに関節調整を行う、オステオパシー固有の手技ファンクショナル・テクニックや筋エネルギーテクニックもあります。

オステオパシーは昔から骨盤や四肢や肋骨の機能障害を研究・施術していたせいか、これらの関節の機能障害の種類をより多く確認していて、それに対応する手技の種類より多く存在します。

SAJのオステオパシーとカイロプラクティックの違いのまとめ

オステオパシーの筋骨格系・内臓系・頭蓋仙骨系を総合的に観察し施術対象とする。

アメリカの過去の調査ではカイロプラクターの半数以上が頭蓋仙骨系に属する領域の施術「SOT」を行っていない。また内臓オステオパシーのような内臓系の概念や手技は無い。

オステオパシーは関節や筋・筋膜にソフトで繊細な優しい手技も数多くあります。そのため関節矯正においてもカイロプラクティックが常時用いる素早いテクニックを、必ずしも用いる必要はない

現在のカイロプラクティックの多くはオステオパシーの様に、筋・筋膜を施術対象とする方も半数以下であるとの報告があります。

カイロプラクティックの中で筋・筋膜機能障害を施術するニモ・テクニックを用いる方は、アメリカの過去の調査は40%はいますし、日本も多いようです。

しかし元々カイロプラクティックは、オステオパシーのように筋・筋膜を施術しない療法として誕生していますから、筋・筋膜を行っていても重視する割合は低いと思います。

特に筋膜の重要性に対する洞察は世界の手技療法の中でオステオパシーが最初とされ、近年この価値が新たにクローズアップされています。

今のカイロプラクティックの主流は、源流のカイロプラクティックからの伝統を引き継ぐ事から、全身の関節機能障害を見ながらも脊椎関節機能障害を原因の中核に添える傾向が高いです。

オステオパシーは昔から全身の関節機能障害を診てきた歴史が長く、脊椎関節機能障害も重視する事は多いが、肋骨や四肢の関節機能障害の方が重要な事もあるとオステオパシーは捉えています。

オステオパシーは骨盤や肋骨や四肢の生体力学や診方や施術法がかなり発展しています。

オステオパシーはホリスティカルな原因論を展開します。

内臓機能障害が原因で副次的に関節機能障害をおこしたり、関節機能障害が原因で副次的に内臓機能障害が起こったり、頭蓋仙骨系の機能障害原因で副次的に筋骨格系や内臓系の機能障害を起こす事もあり得ると考え、多角的な立体的な原因論を持ち個人個人によりオーダーメイドな施術を組み立てます。

 カイロプラクティックはオステオパシーの約20年後、オステオパシーの施術を受けていた隣の州のDDパーマーが旗揚げしました。彼はオステオパシーの創始者スティルの孫からオステオパシーを盗んで生まれたと実は指摘されていた。

あくまで私の憶測ですが、DDパーマーは「絶対にオステオパスの行う様にやってはいけない」と言葉を残しましたが、現在のカイロプラクティックはやはり効果や応用性を広げるためか、オステオパシーが行っていた四肢や頭蓋や筋・筋膜も施術を広げて行きました。

このカイロプラクターの施術を、DDパーマーが果たしてカイロプラクティックと言うのかは疑問です。

 

最後に

記事を最後までご拝読頂きましてありがとうございます。
カイロプラクティックとオステオパシーについてご説明させていただきましたが、この内容に関しましては、様々な意見があるかと思いますので、あくまで私個人の意見となりますので、その点を踏まえご参考にしていただければと存じます。

また、これから整体・カイロプラクティック・オステオパシーなどを学びたいとお考えの方につきましては、オステオパシーの伝統と新しい手技を総合的に学べるスティル・アカデミィ・ジャパンに是非いらしてください。筋骨格系の全身の関節や筋・筋膜の調整から内臓系・頭蓋仙骨系を、世界でも高く評価されるフランス国家認定校のATSAの指導に従いカリキュラムが組まれています。

手技療法のトータリストに成りたい方、国際的に評価されているトータルなオステオパシーを学びたい方は、急がば廻れのSAJをお勧めします、確かで最短で無駄がありません。

 

SAJは定期的に学校説明会を行っています。オステオパシーを知らない方はJОMAのオステオパシー入門もお勧めです。

 

参考文献 

  • オステオパシーの発展
    著:British school osteopathy/翻訳:山崎礼子
  • オステオパシー総覧(上巻)
    著:アメリカ・オステオパシー協会編(1998年/エンタープライズ発行)
  • オステオパシー哲学
    著:アンドリュー・テーラー・スティル(日本オステオパシーメディスン協会)
  • 補完・代替療法カイロプラクティック
    監修:菊池巨一/編集者:多数(2006年/金芳堂)