筋膜リリースはオステオパシーの中の一つ!

最近、日本の手技療法や理学療法やスポーツやヨガなどのジャンルで、筋膜リリースと言う言葉を聞く事が多くあります。
この筋膜リリースはオステオパシーから生まれた言葉というのは御存じでしょうか。

今回はこの筋膜リリースの事についてお話しします。

筋膜リリースは手技療法なのストレッチなの?

日本では筋膜リリースと言う言葉が崩壊している様に感じます。

筋膜を自分でストレッチする行為から手技療法として筋膜を緩める行為まで、様々な筋膜を緩める行為に何でも筋膜リリースと言う様になりました。
私が調べた範囲では筋膜リリースとはオステオパシーから生まれた言葉で、筋膜に対するオステオパシー手技に使われた言葉です。

オステオパシーでは筋膜を緩めたりする手技を筋膜リリースもしくは筋膜リリース・テクニックと呼びました。
日本ではエンタープライズ出版が、アメリカのフィリップ・グリーンマンDOが1989年に書いたオステオパシーの本「マニュアル・メディスン」で、筋膜リリース・テクニックとして紹介したのが始まりのようです。この翻訳本は1995年に出版されました。

後に筋膜リリースという言葉は筋膜が緩む現象をさす事と、この様な筋膜を解放するオステオパシー手技にオステオパスが用いたのが始まりです。素人の方は言葉の起源が分からず適当な言葉の使われ方が広まった様です。

オステオパシーの創始者スティルと筋膜

歴史的に見て、この筋膜の健康に対する重要性を初めに解いたのはオステオパシーで、さらに筋膜を手技による観察と施術の対象にしたのもオステオパシーです。
スティルはオステオパシーのコンセプトを1874年に発表しました。スティルは筋膜が人体で健康に寄与する重要な構造と捉え、筋膜と健康の関わりを解き、更に筋膜をオステオパシーの観察と施術のポイントと捉えていました。
アメリカン・アカデミー・オブ・オステオパシーの会長を務め、日本で2002年に初めて筋膜リリースのセミナーを行った、ジョン・M・ジョーンズDOは初期のオステオパスは筋膜に対する手技をファッシャー・テクニック(Fascial Techniques)と読んだと紹介していますいます。
ATスティルの「オステオパシーの機械的哲学原理」と「オステオパシー哲学」から、筋膜に対する彼の数多くの見解の中から、2つを抜粋し下記に紹介します。

「病気の原因を探す時や、助言を求める際、あらゆる病気の治療を始める時、基本になる場所が筋膜である。」
抜粋 オステオパシーの機械的哲学原理

 

「筋膜にいる間の遅滞と遅滞で生じた致命的な化合物から、身体のあらゆる部分を修正するのに自発的で十分なパワーによって、何故あなた方は全ての病気に身体全体を弛緩させ、収縮させ、刺激を与え、そして浄化しないのか?」  
抜粋 オステオパシー哲学

 

オステオパシー以外の徒手療法で、筋膜に着目した療法には化学博士のアイダロルフが、1960年代に旗揚げしたロルフィングがあるが、そのはるか前からオステオパシーが初めに筋膜を健康に関わる重要性を解き、観察と施術のポイントとし現在まで研鑽を重ね伝えて来ました。

※筋膜は筋肉を覆っている半透明の膜を指します

 

スティルの弟子達の筋膜に対する手技

スティルに直接学んだ学生達はスティルから学び様々な靭帯や筋膜に対するオステオパシー手技を伝えました。以下にその一部を紹介します。

スティルの学生であったウィリアムGサザーランドDO(1873〜1954)は、筋骨格系に対して靭帯や筋膜のリリースに靭帯性関節ストレインという手法を用いました。
このオステオパシー手技はサザーランドの死後彼の弟子のハワードAリッピンコットDOにより1949年に彼の論文で公開されています。。

カンザスシティ・オステオパシー医科大学のウィルバー・コールDOとエスサー・ストームDOは少なくとも1940年代後半にはに今のオステオパシーの筋膜リリースの原型をすでに伝えてたとみられています。ウィルバー・コールDOとエスサー・ストームDOからロバート・ウォードDOは筋膜に対する手技を学び、1950年代前半から現在のオステオパシーの筋膜リリースと後に名前をつけた手法を行なっていました。

その他にもストームの同僚だった、ウイリアム・ニドナーDOは筋膜操作手技を筋膜ツイストとして行った事も知られています。

ロバート・ウォードDOから始まる近代的筋膜リリース

現在のオステオパシーの洗礼化した筋膜リリースは、過去から伝わった筋膜の手技を洗礼化した手技でロバート・ウォードDOの功績が大きいとされています。
マニュアル・メディスンの本の中でフィリップ・グリーンマンDOによると、現代の洗礼化した筋膜リリースは1950年代にウォードDOが旧来から伝わり、軟部組織法や筋肉エネルギーや頭蓋オステオパシーの理論や方法を統合し、より発展させ紹介したのが始まりと紹介しています。 
筋膜リリースの名称はロバート・ウォードDOが1960年代頃に自ら伝えられた手法を改良したオステオパシー手技に命名した造語で、1981年にミシガン州立大学コースの名称で一般に用いたとされています。

オステオパシーを模倣した様なもの

オステオパシーから筋膜リリースは始まりましたが、オステオパシーにヒントを経ている筋膜の手技には以下  の様な物があります。

筋膜リリース・アプローチ

ジョン・バーンズは理学療法士で、彼が1970年代から行い始めたと主張し1980年代になって自らの筋膜に対する手技に筋膜リリース・アプローチと命名した様です。その内容はオステオパシーの筋膜リリースと似た物で、筋膜をスティル・ポイントに誘導する手技も行う事があるようで、まるでオステオパシーの様です。
スティル・ポイントとは、頭蓋オステオパシーを発展させたサザーランドDOが行った組織から傾聴触診で得られる呼吸リズムを静止する現象をさし、オステオパシーの創始者スティルの名をこの現象に名付けました。

その他にも、頭蓋オステオパシーから派生した頭蓋仙骨療法を、ジョンEアプレジャーが一般の医療資格及び医療類似資格者に普及しました。これはオステオパス以外ので多くの理学療法士やカイロプラクターやマッサージ師にも門徒を広げ教えられました。
この頭蓋仙骨療法の中の基礎に10ステップ・プロトコールの10の手法があり、その中の隔膜の筋膜リリースが紹介されました、それをきっかけにオステオパシー以外の手技にも使い始めた様です

乱立する筋膜リリースの意味を定義するとしたら

筋膜リリースはオステオパシーが、筋膜を解放する手技として生まれ、筋膜が正常に緩む現象にも用いたのが始まりです。
おそらく理学療法士のジョンバーンズも理学療法士の世界で広め、オステオパシーの歴史的経緯を知らないまま筋膜が緩む現象や、オステオパシーに模倣して作られた様な手技にも使われる様になった様です。

私が様々な資料を歴史を含めて調べた結果、以下の2つを筋膜リリースを定義するのが最適と思っています。

  1. 筋膜の緊張や歪みの機能障害を解放するオステオパシー手技の事を、筋膜リリースという。また筋膜リリース・テクニックと同様の意味でもある。
  2. 筋膜が緩む、または正常な可動性を取り戻す現象。

 

筋膜リリースはオステオパシーの中の一つ

今、筋膜は注目の的です。オステオパシーの創始者スティルの洞察や実践は今の解剖学や組織学や生理学や臨床でいかに先進的な洞察だったかを、現代の研究で解明が始まっているのです。

 


このスティルから始まった筋膜に対する実践と健康に対する価値の洞察は、この筋膜に対するオステオパシーの価値は普遍的ですが、筋膜だけを細分化して見る事はオステオパシーではありません。膜は全体に広くつながり全体に影響しますが膜以外も全体の一部です。

オステオパシーは筋骨格系として注目する場合、筋・筋膜と関節を観ます。膜以外の靭帯や関節包や結合組織で健康を保つために正常な可動性を必要とします。全身の動きがホリスティカルな生命の健康に寄与するわけです。

筋膜とは筋肉を包む結合組織の膜です、内臓を包み内臓同士や内臓と筋骨格をつなぐ膜は腹膜や内臓提靭帯や間膜と言います。

この内臓膜に対する緊張や下垂などは、オステオパシーでは内臓オステオパシーや内臓マニピュレーションが対応します。
この筋膜以外の内臓被膜に対する手技は筋膜リリースではありませんし、オステオパシーの頭蓋仙骨系が扱う相互張力膜の硬膜の機能障害にも筋膜リリースは対応しません。

オステオパシーはほぼ全身の構造の機能障害に対する手技療法を必要に応じて使いますから、筋膜リリースがオステオパシーではなく、筋膜リリースはオステオパシーの一部です。

筋膜だけの専門家よりオステオパシーの専門家になる為にSAJを進めます。

オステオパシーは筋膜を細分化して観る筋膜リリース専門家に落ちいっては行けません。あくまでもオステオパシー哲学を基にオステオパシー総合診断を行い、施術をオーダーメイドに組み立て施術を行います。
筋膜リリースが必要な方に筋膜リリースを行い、関節調整が必要な方に関節矯正/調整を行い、両方必要な方には両方行います。内臓オステオパシーを組み合わせる事もあれば、頭蓋オステオパシーの組み合わせもそうです。純粋に関節調整が必要な人に筋膜リリースを行うのはナンセンスです。

オステオパシーはホリスティカルな物です。
必要に応じるため全ての系統の一流の手技が求められます。
オステオパシーは手技療法の総合的専門家であり、更に日常生活をアドバイスしセルフケアを進める人です。

筋膜リリースのパイオニアである、本物の筋膜リリース(フランスでは組織テクニックと言います。)をスティル・アカデミィ・ジャパンで学びませんか。
当校の組織テクニックはオステオパシーの世界で結合組織の研究に優れた、オステオパシーのベテラン講師のフィリップ・ボルディーノDOから学ぶ事が出来ます。
筋膜以外の筋骨格系や内臓系や頭蓋仙骨系の一流の手技も学び、総合的に用いるオステオパシーを取得した、世界に共通する普通のオステオパスに成りませんか?

 

参考文献
技療法の原理と実践と オステオパシー医学 ジョンMジョーンズ3世
Myofascial Relese. What is it and How Can It Heip
Osteopathy. Physiotherapy. Naturopathic Medicine. Yoga. and Meditation-Myofascial Unwinding-
Awakening Health