マッサージとオステオパシーの違い

 

今回はマッサージとオステオパシーの違いについて書いてみます。

マッサージは様々なマッサージがあります。ここではマッサージの源流の西洋のマッサージの事を説明した上で、その本流と言えるマッサージを焦点をあて、オステオパシーの違いを筆者がわかる範囲で書いてみます。

マッサージは西洋を起源とする文化なので、東洋医学の按摩や、東洋と西洋の影響を受けて手や指で持続圧を掛ける手法に特化した指圧は今回は比較対象とはしていません。あくまで西洋のマッサージとの比較です。

Fragment photo of a blonde lady with bare back getting a massage by professional masseur

マッサージとは

マッサージの一般の方の社会的認知は手で身体の皮膚・筋肉ほぐす行為であり、その目的はリラクゼーション・美容目的と様々かと思います。
マッサージの歴史を紐解くと、その源流および主流は身体の不調や改善を目的とした手技療法として存在した所が大きく、その傾向は現在も受け継がれている様です。

本流のマッサージのルーツと概要

パー・ヘンパリック・リング

手で人の体を癒す行為は有史以前の時代の壁画に書かれ、紀元前から世界中に広く行われたとされます。
紀元前のエジプトやペルシアやギリシャでも、手で体の皮膚・筋肉をほぐす手技が行われ、「ヒポクラテスの書」や「オデッセイア」などにその事が書き残されている。
マッサージ(massage)の言葉のルーツは、ヘブライ語(mashes)やギリシャ語のマッシー(massin)のアラビア語のマス(揉みこむ)、フランス語のアジ(操作する)の言葉から来ている西洋圏で発達した手技療法です。

16世紀にはフランスの医師アンブロワーズ・パレがマツサージを多用し多くの効果を示し、医療としてマッサージの価値を唱えました。
19世紀になると、スェーデンの体操講師のパー・ヘンパリック・リングが現代マッサージの主流となるスェーディッシュ・マッサージを旗揚し、オランダ・オーストラリア・ドイツもマッサージの効果に研究が盛んにり生理学的研究が進みました。

現代は様々なマッサージがあります、日本の国家資格のマッサージのルーツはオーストラリア式マッサージです。今日の世界で最もスタンダードなマッサージはスェーディッシュ・マッサージと言われます。
正式なヨーロッパのアロマ・マッサージで用いるマッサージの基礎は、スェーディッシュ・マッサージを用いられ参考にされている様です。

マッサージの手技の作用

マッサージは皮膚や筋や腱や筋膜の軟部組織を手で物理的に操作し、この軟部組織の柔軟性を高め体の循環を促し、物理的操作による反射作用を体に与え、身体の恒常性(自己調整・自己治癒)を促すと考えられています。

マッサージの手法(スェーディッシュ・マッサージを参考)
現代マッサージの世界的に普及しているスェーディッシュ・マッサージの基本的手技は以下となります。

  • エフラーゼ(さする手法)
  • ストローキング(推し進める)
  • ペトリサージ(揉み・捏ねる)
  • タポートメント(軽打)

ベーシュカルな手法以外の特殊手法としてフリクション・シェーキング・バイブレーションがあります。
スェーディッシュ・マッサージは一般的には、上記の手技を全身に応用しルーチンに行う術式を施して行きます。

日本へのマッサージの伝播

日本へのマッサージに伝播は、明治から西洋医学の普及にともない陸軍軍医の橋本綱吉がドイツに1885年に渡航した際に、ヨーロッパの医療現場でマッサージが注目されている事を知り、オーストリアのアルバート・ライマイヤー医師の書いた「マッサージのテクニック」の書籍を日本に持ち帰り始まります。
橋本医師はこの本を長瀬時衡医師に託し、この本のマッサージを長瀬医師は広島博愛病院で整形外科や産婦人科にて行い高い効果を示し、マッサージの信奉者になりました。
長瀬医師はアルバート医師の「マッサージのテクニック」の本を明治26年に翻訳し、「莱(ライ)氏按摩術」として出版した。この当時はマッサージの言葉が一般に馴染みがなく「西洋式按摩」「摩擦術」などの按摩の類似語も用いた様です。

日本のマッサージの歴史を見ると、アルバート・ライヤー医師のオーストラリア式マッサージの本「マッサージのテクニック」を持ち帰り真似た所から始まっており、この本が翻訳され普及し東洋の按摩を行なっていた者が西洋の類似した技法を取り入れた事から日本のマッサージが始まった様です。

国家資格とマッサージ

この様なライヤー氏マッサージから始まった日本のマッサージは、按摩師が法制化の変化に伴いマッサージも自分達の所有だと主張し、現在の「按摩(あんま)マッサージ指圧師」資格になって行った様です。

按摩(あんま)は中国医学がルーツでマッサージは西洋由来で別物です。日本では一般的にマッサージが抹消から求心方向に施す手技で、按摩が中心から遠心方向に施す傾向が多い手技で違いがあるとしています。指圧は指や手掌や肘などで圧迫手法の手技と大まかに言えます。
国家資格の手技はリラクゼーションだけでは無く、症状の改善や緩和にも有効との主張があります。

マッサージとオステオパシーの違い

オステオパシーはオステオパシー総合診断に基づいて、オステオパシートリートメントの計画し、オステオパシー手技のトリートメントを用います。またオステオパシー機能障害の改善に準じた日常生活の指導やセルフケアの指導を行う場合もあります。
それに対して日本で行われているマッサージの全体像は、どのような人にも基本的には全身に同じ様なルーチンなマッサージを行う典型的な手法です、もしくは受ける側が局部的に症状がある部位のマッサージの施術を依頼しマッサージ師がそれに従いマッサージを行います。

オステオパシーは筋骨格系を中心に全身を診る考えと内臓を中心に全身を考える手段を持ちます。また頭蓋仙骨系といった脳神経や中枢神経系に関わる構造と機能に対する考えと手段を持ちます。
筋骨格系・内臓系・頭蓋仙骨系の全てを統合し、ホリスティカルに全身構造の生命の所作であるモーションを検査と評価を行い、オステオパシー総合診断を診たてオーダーメイドなトリートメントを行うのがオステオパシーです。

スティル・アカデミのオステオパシーから観たマッサージとの違い

やはりマッサージは、特に日本の民間のマッサージはリラクゼーションに特化した文化に感じます。
それに対してオステオパシーは身体の不快な症状に対して行われる事が手技療法です。勿論定期的なメンテナンスとしても利用されますが、多くが身体の痛みなどの改善や緩和目的で行われる事が多いです。
オステオパシーの適応とする症状は、オステオパシー機能障害を原因または要因とする症状です。オステオパシー機能障害から生じる症状は、頭痛・頚部痛・背部痛・腰痛などの大半の一般的な症状の原因や要因です。

マッサージはルーチンワーク?

マッサージは固有の哲学がない様に見えます。

身体の不調の原因や要因になり得るオステオパシー機能障害の様な概念が確立されていないため、マッサージ診断といった確立した固有の診断が見つかりませんでした。
例えば、西洋圏の代表的なマッサージのスェーディッシュ・マッサージは、一般的に誰にでも一定の決まった術式に則ったルーチンの全身マッサージを行います。スティル・アカデミィ・ジャパンのオステオパシーは総合的なオステオパシー診断に基づき、施術法がオーダーメイドです。
ただ、西洋式マッサージのスェーディッシュ・マッサージと異なる、ホッファ式マッサージは局所的マッサージを用いある程度個人の状態により異なる特定的施術を選択する様ですが、日本では普及していません。

マッサージにないもの

マッサージはオステオパシーの様に関節機能障害に特化した生体力学の考えや、検査&矯正手技がありません。関節機能障害は筋により起こることもあり得ますが、靭帯などの結合組織が関節機能障害に大きくかかわる場合は、マッサージの様な軟部組織の施術では改善や回復が困難です。
マッサージは内臓のオステオパシー機能障害には、わずかに一部適応可能な所もありますが、頚部咽頭腔や胸腔や小骨盤内臓腔などの広範囲の内臓に生じる内臓機能障害に対する手技がありません。
マッサージには、頭蓋仙骨系といったオステオパシー固有の中枢神経や脳神経や下顎に機能に関わる機能障害に適した手技がありません。

オステオパシーは筋骨格系・内臓系・頭蓋仙骨系を総合的に診てオーダーメイドな施術を行いますが、マッサージは筋骨格系の骨関節以外の軟部組織(皮膚・筋・腱)のみの組織の機能障害には有益かも知れませんが、オステオパシーからみると、ホリスティカルに全体をフォローしていません。
筋膜もマッサージの手技は一定の有効性がありますが、オステオパシーの組織テクニック(筋膜リリース)の様な硬化した結合組織のクリープを引き起こし、柔軟性の回復への高い効果は期待するのは難しいと思います。

上記の比較はあくまで、フランス国家認定校のアンドリュー・テーラー・スティル・アカデミィの提携校、スティル・アカデミ・ジャパンで提供されるオステオパシーとマッサージの違いを個人的に比較した物です。
日本の一部の自称オステオパシーや、オステオパシーを真似た様なアプローチとの比較ではありません。

参考文献
 写真でみる医療マッサージ・・出版 エンタープライズ

インターネットで複数の情報を得ています。
あくまで一つの意見として受け入れて下さいますと幸いです。