2018年 SAJより10名のOsteopathe D.O.が誕生しました

オステオパシーⅮ.O.論文過程を終えて


 

オステオパシーⅮ.O.論文過程を終えて      神永叙子Ⅾ.O.  

2018年3月スティル アカデミィ ジャパン(SAJ)の論文口頭試問が行われました。 そして、オステオパシーの「Ⅾ.O.」資格を取得しました。 フランス・リヨンにあるフランス政府公認オステオパシー校のAndrew Taylor Still Academy(ATSA)と提携し、スティル アカデミィ ジャパン(SAJ)が誕生したのが、2009年。 1期生として入学してから5年間、解剖学、生理学、病理学、臨床学、症候学、レントゲン学、そしてオステオパシーの専門教育を学びました。科目毎に実技試験、筆記試験を受けて合格点に達しないといけません。それをクリアした者だけが、フランスATSAにて、ディプロマ取得試験を受けられます。

ディプロマ取得試験では、医師と2名のオステオパスで構成された試験官の前で、実際の患者さんに対して、問診と施術を行います。そして最後に、試験官より厳しい口頭試問があります。 それに合格し、国際的なディプロマ「Diplome d’ Osteopathe」を取得したのが、2014年です。

2017年から論文過程がはじまり、2018年に、論文の書類審査と口頭試問を経て、オステオパシーの最高資格である「Ⅾ.O.」を取得しました。 「ディプロマ」も「Ⅾ.O.」も、今までは何年も海外留学しなければ取得できないものでした。語学や費用の問題もあるので、こういった資格を取得できるのは、ごく少数の恵まれた人達だけでした。 しかし、日本オステオパシーメディスン協会(JOMA)の理事の方々の努力により、フランスATSAとJOMAとの提携が実現し、日本で学びながら、国際的に評価される「ディプロマ」と「Ⅾ.O.」が取得できるようになったのです。これは、とても画期的で素晴らしいことなのです。 皆、働きながらなので、実際の学習の日々は、かなり大変です。そして費用も結構かかります。それぞれ多くのストレスを抱えながら、ここまできました。

論文は思っていた以上に大変でした。まず、日本で初めての論文過程なので、参考にできる論文が無いことです。見本の論文を1つ渡されましたが、フランス語なので、あまり内容がわかりませんでした。 そしてフランスATSAの講師がチューターについてくれるのですが、チューターとのやり取りは、各自に任されていて、どう遣り取りすればいいのか、最初はまるでわかりませんでした。1期生は、全てにおいて初めての経験なので、フランス側も日本側も、運営側も学生側も、よくわからないことが多いのです。

論文ではテーマを決めるのも一苦労でした。私は下顎骨をテーマに「下顎骨と連動する他構造とのバイオメカニクスの検証」にしました。ややこしいタイトルですが、下顎骨の役割や意味を検証する内容です。 ようやく決まったテーマですが、検査項目を決めるのが大変でした。何を検査すれば結論が導けるのかが、まるでわからず霧の中を進むようでした。ようやく検査項目を決め、検査データを集めてからも、それを如何に集計し分析すれば、答えが導き出せるのかが判らず、それを決めるのに、かなり時間を費やしました。ようやく分析結果を検証しても、考察と結論へ結びつけるのも苦労しました。図を書いたり、模型で検証したり、データを見直したり、臨床で確認をしたりと、何度も何度も検証しては考え直し、何度も書き直しました。よくできたと思っても翌日読み返すと、なんだか足りない、、、、そんなことの繰り返しでした。 そして大変なのが、提出形式は、日本語とフランス語だったこと。フランス語に翻訳してもらった後、修正をしたくても、英語なら自分でも少しの修正はできるのですが、フランス語だと、まったくわかりません。自分でちょっとした修正ができないので、ものすごく不自由さを感じました。 苦労続きの論文でしたが、論文を書き進めることで、人体のしくみを、いつも以上に深く考えることになりました。それは施術をする上で、強力な力となって、私の施術に対する理論や技術に大きな前進をもたらしました。

下顎骨は学校教育では、解剖学と少しのテクニックくらいしか学ばないのですが、調べて検証していくと、下顎骨には人体に対して大きな役割があったのです。論文という形式でなければ、臨床で、なんとなくそう感じただけで終わってしまうところですが、検査・分析・検証・考察・結論という過程を経ることで、より深く掘り下げ思考することができるのです。やり終えた今は、論文に取り組んで大きく飛躍できたと自信を持って言えます。取り組んで、本当に良かったです。

こういった素晴らしい機会を与えてくれたSAJの理事の方々、ATSAの先生方、講義の準備をしてくれているスタッフの方々、通訳の方達、同期の皆さん、そして日々、私に沢山の学びと喜びを与えてくれるクライアントの皆様に、深く感謝致します。 SAJでの学びは一段落ですが、これからも日々、多くの人の役に立てることを喜びとして、技術の向上の為に努力し、前に進んでいきたいと思っています。